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本積み

「本積み」という言葉がある。
本の積み方を指す言葉だ。

積ん読」という言葉で表されるイメージには、読んでいない本が、書棚にあふれ、床や廊下に積み上げられているイメージを思い浮かべることもあるが、その場合、積み重ねられる本は、一冊一冊異なる本である、はずだ。
今日のテーマの「本積み」は、同じ本の積み方なのだ。

出来上がった本は、通常、製本所から納品される。
さて、ところで、本はどうやって納品されるのか? って一般的に知られているのだろうか?

一般の本、たとえば、大日本印刷とか凸版印刷とか大手の印刷所で印刷されると、
つまり、
印刷機に刷版と呼ばれる印刷インクが付くための版に、インクがセットされ、紙と刷版が押圧され、刷版に付着しているインクが紙に移ることは、どこの機械でも、どんな機械でも当たり前なのだが、
「オフ輪」と呼ばれるオフセット印刷の輪転機は、もう10年以上も前から、その紙が、折りたたまれて出てくる。いわゆる「折り本」というものになって機械から排出される。
印刷後の紙(本文用紙など)は、普通印刷所に運ばれて、折り・丁合・かがり・クルミ・仕上げという順序で出来上がるのだが、ほとんど自動で出来るようになっている(ちょっと問題のある標記だなぁ、これは。それぞれの段階では、人間がセットし、管理するというべきか。これは、手製本とは異なるというような意味で取って欲しい)。この辺のことは、最近、製本所にも印刷所にも出向いていないので、今度現状をレポートできるようにしなきゃ。

さて、専門学術出版の場合は、印刷所→製本所→出版社という本の流れも一般的ではあるのだが、
基本的に本は、
印刷所→製本所→取り次ぎ→書店→出版社の倉庫
と、読者に購入されなかった本の流れはこうなるのが一般的だ。
印刷所→製本所→出版社のルートをたどる本は、出版社の社内点検用であったり、献本に使われる本である。
その献本が100冊程度であるなら、そして、直ぐに、1冊1冊、献本先に発送されるのであるなら、
どんな本の積み方をしても、大きな問題はない。

ここでいう本積みというのは、しばらくの間、本をその場所で保管すること、およびその保管冊数が明確に分かるための積み方をさす。
4本積み・5本積み・7本積み・8本積み(2種類)などがあるが、保管場所のスペース(底辺と高さ)と本の冊数によって積み方を適宜決めて積み上げるのである。
私の若年時代、体育会系書籍編集者だったころは、この本積みの巧さ・早さ・頑丈さにこだわっていた。
おそらく、大手の出版社の編集者で、この本の積み方が出来る人間は稀であろうと、思っていた。
何が幸いするか分からないが、少部数の私どもの本は、もちろん取り次ぎに搬入するものもあるが、だいたい実際に出来上がった本をそのまま(ロットとして)見ることができる。

最近は、製本所の納品車に、パレットと呼ばれる木製の台の上に、本積みで積載されて出版社に届く。
それを、
「ああ、13本積みね」
「ええ、そうです」
「1本は、10冊?」
「いえ、5冊です、本が重いですから」
「そう、じゃぁ、1パレットは、13面×5冊×8段。あまり5本、で545冊ですね」
「はい、納品伝票にもそう書いてあります」
「はい、了解」
という感じで、納品受領書に、受領印を押して、納品完了となるのである。

このように、1タイトルの本が大量にある場合の積み方を本積みという。
これは、本の向きを違えることで、本を傷めずに安定させて積むことができ、数を当たることも容易な組み方なのである。
ちなみに、本は、背の方がノドの方より厚いので、同じ方向に高く積むと、必ず崩れる。
同じ方向に本を高く積むことを、棒積みという。
この棒積みは、基本的に素人の本の扱い方である。
ただ、書店では、平台に、棒積みにしてきれいに本を並べているのが普通だ。
他の本と支え合わせて、安定させている場合は、この限りではない。

昔、製本所の親父に
「おまえも、本の積み方が上手くなったなぁ〜。編集者にしておくのがもったいないから、ウチに来るか?」
と言われたとき、
結構嬉しかった。

ゴッホの気持ちがちょっと分かった。